【為替市場を知る】


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外国為替相場は私たちの暮らしと密接にかかわっています。



第2次安倍政権発足後の円安基調や、年明け以降の急速な円高などで、

新聞やテレビのニュースでその動向を意識する機会が増えたのではないでしょうか。

しかし、相場の動きを日々の生活の中で実感するのは、海外旅行などごくわずかな場面に限られます。

中高生のみなさんの中には「日本のお金(円)の価値が時々刻々と変化している」と言われても

ピンとこないという人が多いかもしれません。

為替相場は政治や経済のほか、ときには自然災害の影響も受けて変化します。

それだけに銀行や商社など為替取引に直接かかわっているプロでも正確に予想するのは

難しいといわれます。

一方、為替の動きとその原因を注意深く観察していると、国内外の様々なニュースが

経済にどんな形で影響を及ぼしているのかが見えてきます。

ここでは為替の市場がどんな仕組みになっているのか、相場はどんな要因で動くのかなどを

なるべく分かりやすく解説します。

為替のニュースは数字ばかりで親しみにくいと感じるかもしれませんが、

その裏に隠された人間の営みが見えてくればきっと興味がわくはずです。


【外国為替相場って?】


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国や地域によって流通するお金の種類は異なります。


例えば日本では円、米国ではドルが使われています。

欧州では多くの国がユーロという共通の通貨を使っています。

これらの通貨は限られた国や地域でしか使えません。


国を越えてお金をやりとりするときは、通貨を交換しなければならないのです。

身近な例から考えてみましょう。

米国に旅行するときは現地の通貨であるドルを手に入れておかなければ、買い物もできません。

そこで出国する前に銀行に行き、円をドルに交換しておく必要が生じます。

このとき、同じ10万円を持って行っても、受け取るドルの額は日によって(時間によっても)

異なります。

つまり、違う国の通貨の交換比率(レート)は日々、変動しているのです。

これを外国為替相場と呼びます。



【円ドル相場とは】


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一般に円相場と言えば、円とドルの交換比率を指します。



これは米国が日本にとって重要な貿易相手であるというだけでなく、

ドルが世界で最も広く使われる「基軸通貨」だからです。

例えば、日本企業が中国など米国以外の企業と取引するときも、

ドルでお金をやり取り(決済)することが珍しくありません。


相場は、新聞やテレビのニュースでは「1ドル=何円何銭」(1銭は1円の100分の1)と

1ドルの値段を円で表すのが普通です。

仮に、1ドル=110円だった相場が、1ドル=120円になったとしましょう。

110円で売られていた1ドルが、120円に値上がりしたわけですから、ドル高です。

裏返すと円は値下がりしたことになります。

数字は110円から120円に増えましたが「円は安くなった(円安)」ので注意が必要です。

ただ、私たちが銀行に行っても新聞などで報じられるレートで両替してもらえるわけではありません。



ニュースで目にする相場は、銀行などの金融機関同士が通貨を売り買いする

「インターバンク市場」での値段だからです。個人が銀行でドルを買うと、

手数料などを上乗せされるので、少し割高になります。

普通の商品でも業者が売り買いする卸売価格に比べ、私たちが店で買う時の小売価格は高くなります。



通貨の場合もこれと同じで、新聞に載っている相場は、いわば「卸値」にあたるのです。



【外為市場ではどうやって取引しているか】


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では、通貨はどこで取引されているのでしょう。


新聞やテレビではよく、「東京市場」「ニューヨーク市場」などという表現を使います。

しかし通貨の場合、株式のように専用の取引所があるわけではありません。

ほとんどの国では、為替を扱う金融機関が、電話や電子ネットワークを通じて

直接・間接に取引をしています。

これらをひっくるめて「外国為替市場」、略して「外為市場(がいためしじょう)」と

呼んでいるのです。

一般に、「東京外国為替市場」または「東京市場」と言えば日本時間の日中、

「ロンドン外国為替市場」「ロンドン市場」と言えば欧州時間の日中、

「ニューヨーク外国為替市場」「ニューヨーク市場」と言えば米国時間の日中に行われる

取引を指し、取引そのものは全世界で24時間可能です。

実際の取引はどのように行われるのでしょうか。

テレビで円相場のニュースが流れるとき、丸いテーブルを囲んだ人たちがマイクに向かって

何かつぶやきながら取引をしている場面を目にしたことがあるのではないでしょうか。

為替の仲介業者の担当者(ブローカー)は銀行などから売買注文を受け、

それらをつき合わせて取引を成立させています。

現場をのぞいてみましょう。

「円卓」と呼ばれるテーブルを10人前後のブローカーが囲んでいます。

それぞれのブローカーの前には顧客の銀行とつながったマイクとスピーカーが備え付けられています。

「ニーヨン、ウリ、ニ(24、売り、2)!」。スピーカーからある

銀行のディーラー(外貨取引の担当者)の注文が流れます。

この暗号のような言葉のうち、「24」は銭の部分を表します。

この日の相場が110円台だったとすると、円の単位はみんな分かっているので省略し、

「110円24銭」という価格を提示していることになります。

「2」は売買高です。ドルの取引は100万ドル単位でするので、

全体としては「110円24銭で200万ドルを売る(円を買う)」という意味になります。

これを聞いたブローカーたちは、一斉に目の前のマイクに向かって「ニーヨン、ウリ、ニ」と

連呼します。

この声は各ブローカーが担当している銀行に流れます。

すると、これを聞いたある銀行が、「マイン(私が買う)!」という声をあげました。

これで取引は成立。見ていた記録係が数値を入力し、電光掲示板の数字は新しい相場である

「110円24銭」に変わります。

ちなみに、相場関係者の間では、買う場合は「マイン(mine)」、

売る場合は「ユアーズ(yours)」という言葉を使う習わしになっています。

ただ、こうした売買は日本での取引全体からすると多くありません。

では、このほかにどんな取引形態があるのでしょうか。

例えば電子ネットワークにつながった端末から売りや買いの注文を出すと、

コンピューターが自動的に付き合わせるサービスがあります。

先ほどの例でブローカーがしていた仕事をコンピューターが代わりに行うのです。

この場合、ディーラーはオフィスに置いてあるモニター画面を見ながら、

キーボードで注文を入力するだけです。

他にも、ブローカーを介さず、銀行同士が直接、取引する方法があります。

この場合は少し変わったルールが存在します。

どのような取引をするのか、ドルを例にとって説明しましょう。

ドルを買いたいA銀行のディーラーは、電話などでB銀行に値段を打診します。

このときA銀ディーラーは取引する額だけを提示し、売りたいのか買いたいのかは告げません。

自分が通貨を売りたいのか買いたいのかを相手に知られてしまうと値段を操作されてしまい

不利になるからです。

例えばドルを買おうとしていることが知られると、足元を見られて

少し高めの価格を提示されてしまうかもしれません。

金額は100万ドルを1本と呼ぶので、1000万ドル買いたい場合は、

電話でB銀ディーラーに「10本のプライス(価格)は?」などと取引額だけを示して相場を聞きます。

これに対して、B銀ディーラーは売値と買値の両方を告げなければなりません。

例えば、「110円15銭~20銭」なら「1ドルが110円15銭なら買う、

110円20銭なら売ってもよい」という意味です。

A銀ディーラーが110円20銭で買ってもいいと思えば、そこで初めて「買う」と意思表示して

取引は成立します。



【為替市場の動きを知る様々な値】


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為替相場の動きは新聞、テレビ、インターネットなどで知ることができます。



例えば日本経済新聞では、朝刊1面の左下に前日の終値(おわりね)を掲載しています。

終値は普通、市場が閉まったときの相場を指しますが、外為の取引は24時間行われているので

厳密には終値は存在しません。

ただ、午後5時にはほとんどの取引が一段落するので、この時点での値を便宜上、

終値として扱っています。

終値を見ると、110円15銭~17銭などと幅があります。

これは銀行同士の取引のところで見たように、その時点で提示されていた買値と売値、

つまり気配値(けはいね)を示しているからです。

学生対抗戦では、このうち、ドルを買う方の値段(小さい方の値、先の例では110円15銭)を

「正解」とします。

「前日比で何銭高/安」という時もこの値を比べることになっています。

ほかにはどんな値があるのでしょう。

日経新聞の場合は朝刊の「マーケット総合面」に為替相場の動きがまとめてあります。

高値(たかね)と安値(やすね)は円が最も高かった/安かった時の相場です。

両方を比べると、その日どれくらいの幅で相場が動いたのかが分かります。

中心相場は、その日、最も取引量が多かった相場です。

売買高を見るとその日の取引が低調だったのか、活発だったのかが分かります。



【為替は一物一価】


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終値、高値、安値、中心値などの値は、
中央銀行である日本銀行(日銀)が発表しています。



日本銀行のサイトの「統計」の中にある「外国為替市況(日次)」を開くと、

毎日の相場を確かめることができます。

ただ、どうやって調べたのか疑問を持つ人もいるでしょう。

先に見たように外為市場は様々な業者が様々な方法で取引しており、

全体を把握するのは難しそうです。

実は、これらの値は日銀が代表的な銀行や仲介業者などから情報を集めて判断しています。

つまりサンプル調査なのですが、実勢からそれほど外れることはないと考えられます。

これは外為市場が非常に効率的にできており、業者や取引方法によってドルの価格が違う場合には、

すぐにだれかが安い方で買って高い方で売るからです。

このような取引を「裁定(さいてい)取引」といい、こうした取引によって、

通貨は市場全体でほぼ同じ価格になります。

つまり、「一物一価」がほぼ成立しているのです。


【相場はなぜ動くのでしょうか】


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「お金の値段」が変わる、この不思議な現象はなぜ起きるのでしょう。



自動車や野菜などの値段は需要と供給によって決まります。

その商品を買いたいと思う人が増えれば価格は上がり、買い手側の需要を上回る量の商品が

供給されれば下落します。

実は、円相場が変動する仕組みもこれと同じです。円の需要が増えれば円高に、

減れば円安になるのです。

逆にドルの需要が増えれば円安(ドル高)、減れば円高(ドル安)です。

では、どのような時に通貨の需給は変化するのでしょうか。

真っ先に思い浮かぶのは貿易(輸出入)でしょう。

例えば米国の景気が良くなり、日本から米国への輸出が増えたとします。

日本の輸出企業は米国企業にモノを売った代金を、最終的には円で受け取らなければなりません。

ドルを持っていても日本国内では仕入れの代金や従業員への給料を払えないからです。

ですから米国企業がドルで代金を支払った場合は、日本企業の側がそれを円に替えます。

米国企業に円で支払ってもらう場合でも、相手企業があらかじめドルを売って

円を手に入れておかなければなりません。

このため輸出が輸入を上回り、日本の貿易黒字が増える局面では円の需要は増え、

逆にドルは売られて供給が増えます。相場は円高・ドル安に動きやすくなるのです。

投資も相場を動かします。

生命保険会社などの「機関投資家」は、私たちから預かったお金を運用して増やすために、

国境を越えて株式や債券を売買します。

例えば日本の景気の先行きが思わしくなく、株価が下がると見れば、日本企業の株を売って

欧米企業の株を買うかもしれません。

このとき、貿易でモノが売り買いされるのと同じで、ドルを手に入れるために円を売ることになり、

円安の要因になります。


【経済の基礎的条件】



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円相場を動かす要素は様々です。



貿易収支のほか、物価の動向や金融政策も影響を与えます。

市場参加者などはこれらの要素を「経済の基本的な条件」という意味で

「ファンダメンタルズ(fundamentals)」と呼びます。

以下、代表的なものを紹介しましょう。

(1)金利差――お金は金利が高い国に流れる傾向があります。

日本では低金利が続いており、預金をしてもほとんど利息は付きません。

例えば、銀行にお金を定期預金として預けても、金利は1年で0.01%前後です。

100万円を預けても、1年に100円くらいしか利息がつかない計算です。

これに対し、外国の通貨で外貨預金をした場合、もっと高い金利がつくことが少なくありません。

日本円でお金を預けるより外貨で預金する方が得だと考える個人や企業が増えれば、

円が売られてその国の通貨が買われます。

米国や欧州など主要国・地域の政策金利は、低い状態が続いています。

低金利によってそれぞれの通貨の価値を引き下げる「通貨安競争」につながるのではないかと

懸念する声も出ています。

(2)国際収支――国境を越えてモノ、サービス、資本(株や債券など)を売り買いした収支をまとめて

国際収支と呼びます。

すでに説明したように、例えば貿易収支(モノの輸出入)なら日本の黒字が増えるときは

為替相場を円高に、黒字が減ったり赤字が増えたりするときは円安に動かす力が働きます。

モノだけでなくサービスなどの取引も含めた「経常収支」でもお金のやり取りが発生するので

原理は同じです。

(3)お金の供給量――各国の中央銀行(日本では日本銀行)は、物価や金融を安定させるため、

世の中に出回るお金の量を調節します。

これを金融政策と呼びます。

例えば日本では物価が継続して下がる「デフレーション(デフレ)」と呼ばれる現象が

長く続いてきました。

日銀は金利を下げて企業や個人がお金を借りやすいようにしてきましたが、

金利はゼロ%近くまで下がってしまい、これ以上、下げる余地がなくなってしまいました。

そこで、銀行が運用のために持っている国債などを買い取って銀行に代金を振り込み、

世の中に出回るお金の量を増やそうとしています。

ところが、それでも世の中に出回るお金の量がなかなか増えません。

銀行が企業などへの貸し出しを増やさず、余ったお金を日銀にどんどん預金してしまうためです。

このため、今年2月からは、銀行が日銀に預けるお金(当座預金)の一部にマイナス0.1%の

金利を適用する「マイナス金利政策」を導入しています。銀行が日銀にお金を預けると、

利子をもらえるどころか、逆に手数料を払わなければなりません。

こうすれば、銀行は日銀に預けるお金は必要最小限にして、企業などへの貸し出しに

お金を回すだろうという狙いです。

こうした金融緩和をすると、通常なら円の供給が増えるので円安要因になります。

同様に、米国の中央銀行にあたる米連邦準備理事会(FRB)がドルの供給を増やせば、

一般にドルは安く(円高に)なります。

2月からのマイナス金利政策によって、市中の金利も下がりました。

「(1)金利差」で説明したとおり、海外と比べて日本の金利が下がれば、これも円安につながります。

マイナス金利は様々な効果を狙った金融政策で、その効果はどれも円安につながると考えられます。

(4)物価――物価はモノやサービスの価格全体のことで、消費者物価指数などで測ります。

一般に物価が上がる「インフレーション(インフレ)」が起きるとその国の通貨は下落し、

デフレが進む局面では通貨価値は上昇します。

それはなぜでしょう。

例えば、モノの価格が高くなるということは、同じ100円で買えるモノの量が減ることを意味します。



つまり裏返すと、物価が上がっているときは、お金の「モノを買う力(購買力)=お金の価値」が

下がっているのです。

デフレのときは「お金の価値」が上がっているので円高になりやすいと言えます。

現在の円相場の水準が割高なのか割安なのかを、日米の物価水準から考える方法があります。

例えば、世界中で売られており、貿易もしやすい商品が、日本で1,000円、

米国では10ドルで売られているとしましょう。

1,000円と10ドルで同じ商品が買えるので、1ドル=100円(1000÷10=100)が、

「通貨の実力」だということになります。

一つの商品だけで物価を比べるのは乱暴ですが、仮に実際の相場が1ドル=120円なら、

実力と比べて円は安くなりすぎていると考えてもいいかもしれません。

英国の経済雑誌「エコノミスト」は、同じような考え方で、世界中で売られているマクドナルドの

「ビッグマック(ハンバーガー)」から、1ドルが円やユーロでいくらになるかを

計算して発表しています。


【相場は美人投票1】



市場参加者はこれらのファンダメンタルズを念頭に置きながら、相場の動きを見ていますが、

実際に円相場の先行きを予想するには別の要因を考える必要があります。

市場参加者の思惑です。

日本の景気が上向きそうだというニュースが流れたとき、円相場はどちらに動くのでしょうか。

実は、これは非常に難しい問題です。

「相場はなぜ動くのでしょうか」の項で説明したように、景気が良くなって国内の消費が増えれば、

輸入が増加して貿易黒字が縮小(もしくは貿易赤字が拡大)して円安になるかもしれません。

つまり、貿易に注目すれば、円安要因だといえます。

しかし、低迷していた株価が上昇するのなら、海外の投資家が日本企業の株式を買うため、

円高になるかもしれません。

結論から言うと、実際に為替を取引している市場参加者が、貿易、投資のどちらの要因を

重視しているかによって動きは違ってきます。

例えば、円相場と日経平均株価の動きをグラフにして比べれば、似た動きをしている時期、

反対の動きをしている時期、全く関係がない時期があることが分かるはずです。

このような市場の様子をケインズという経済学者は「美人投票」に例えました。

ただし普通の美人コンテストと違って「だれが1番の美人に選ばれるか」を当てるゲームです。

このルールでは、参加者は「自分が美人だと思う女性」ではなく

「みんなが美人だと思いそうな女性」に投票します。

市場の参加者は常にほかの参加者の顔色をうかがい、「他人が何を美人の基準にしているか」を

見極めようとしていると言えます。

ですから、円相場の予想をするときは、市場関係者たちが、今どんなニュースに注目しているのかを

知っておく必要があります。

円相場と他の経済指標の動きを比べ、為替の解説記事を毎日読んでおけば、

それは見えてくるはずです。


【相場は美人投票2】


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為替の取引をする人や、彼らにアドバイスするエコノミストたちは
どんな方法で相場を予想するのでしょうか。


代表的なものに「チャート分析」と呼ばれる、グラフを使う方法があります。

相場の動きをグラフにすると波のような形を描きます。

ここから過去の変化の特徴をつかみ、将来の動きを予想するのです。

例えばどれくらいの幅で相場が動いているのか、波の頂点(最高値)から次の頂点までの期間は

平均してどれくらいかなどを調べます。

グラフを使った分析は、1週間から1カ月くらい先の相場の傾向を予想するのに有効だといわれます。

1カ月以内の短期間では、各国の金利差など「経済の基礎的条件」に大きな変化がないことが多く、

過去の経験則で相場が動く傾向があるからです。

どうしてグラフの分析から将来の相場が予想できるのかと不思議に思う人もいるでしょう。

答えは、「市場参加者の多くが、同じグラフを見て予想を立てるから」。

つまり、ここでも「美人投票」の原理が働いているのです。

例えば、ここ数カ月、ある値まで円安が進むと必ず円が買われ、

それ以上は円安が進まなかったとします。

そうすると、市場参加者は、「ほかのディーラーもこの値以上に円安は進まないと考え、

その近辺まで円安が進むと円買い・ドル売りに動くだろう」と考えます。

すると、実際に一定の値を超えて円安は進まなくなるのです。

このように、市場にはみんなが同じ予想をすると、それが実現するという性質があります。


【イベントと市場参加者の予想】



為替相場が大きく動くのは、市場参加者が思いもかけないような事件や変化(サプライズ)が

起きたときです。

例えば、日銀が次の金融政策決定会合(年8回開く金融政策の中身を決める会議)で

金融緩和を打ち出すという「予想」(経済学では「期待」と呼びます)が広がると、

会議がまだ開かれていなくても、市場では先取りして円安が進みます。

市場関係者は金融政策によって円の供給が増えることを織り込んで、そうなる前に取引するからです。

最近では、政府や日銀が中長期の政策目標を発表し、それが実現すると市場参加者に

信じさせることで相場を動かそうとすることも増えています。

以前に日銀が「物価上昇率が2年以内に2%になるようにお金の供給量を大幅に増やす」と

表明したときも円安が進みました。


ただし、こうした手法は、目標を掲げた政府や中央銀行に対する市場参加者の

信認(クレディビリティー)があって初めて効果を発揮します。

金融政策決定会合の結果が発表されたとき、予想通りの規模で金融緩和が行われるのであれば

相場はあまり動きません。

ただ、予想を裏切って「金融緩和は行わない」と発表されたら、円高に振れるでしょう。

逆に金融緩和の規模が予想より大きい場合は円安に動くと考えられます。

ですから、相場を予想するには、その期間にどんなイベント

(主要国の中央銀行の金融政策決定会合、選挙、注目される経済統計の発表など)が

予定されているかを知っておく必要があります。

そして市場参加者がイベントの結果や相場への影響をどう予想しているか、

それがどれくらい相場に織り込まれているかを探るのです。

こうした市場の予想は新聞やテレビの報道、シンクタンク(経済研究所)のリポートなどから

読み取ることができます。

ただ、イベントが必ずしも予想通りに市場に影響するとは限りません。

円安につながる効果を狙った日銀のマイナス金利政策は、1月29日に導入が発表された直後は

円安になったものの、すぐに円高になってしまいました。

海外の経済情勢が影響したとされていますが、日銀がマイナス金利政策を導入したときのやり方が

よくなかったために市場が思ったように反応しなかったという見方も出ています。


【経済統計】



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為替相場は政治の動きから自然現象まで、
さまざまな要因を反映して変化します。



ただ、その中で最も大きな影響を与えるのは、やはり経済の動きでしょう。

どのような経済事象が起きているのかは、新聞などのニュースを見れば分かります。

ただ、個々の企業の動きを追うだけでは、貿易や生産といった経済活動が国全体として

どのように変化しているかについては、理解できない場合があります。

1カ月、1年といった期間でこれらの変化を知るには、役所などが発表する統計や指標を調べると

便利です。

例えば日経新聞・電子版では最新の為替・株式市場の数値、発表された経済指標を

調べることができます。

また日経新聞・朝刊の1面には前日の円と米ドルの為替レートが掲載されているほか、

マーケット総合面に前日の相場の動きの解説があります。経済統計は経済面、

企業の投資や業績のニュースは企業面と投資情報面、モノやサービスの価格動向は

マーケット商品面に掲載されます。

比較的大きなニュースは1面、総合面、海外の動きは国際面をチェックすれば分かります。


【様々な景気指標】


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景気全体が良くなっているのか、悪くなっているのかを知るのに便利な指標としては、
国内総生産(GDP)があります。



GDPは国内で行われた経済活動の成果(付加価値)の総額であり、

経済がどれだけ成長しているかを知る手がかりになります。

「景気」という言葉に「気」という字が入っているように、経済は人々の心理にも影響されます。

企業が景気の先行きに楽観的か悲観的かを知るには日銀が発表する

企業短期経済観測調査(短観)の「業況判断」を利用できます。

これは企業に「あなたの会社の業績は以前と比べて良くなっていますか」

「これから良くなりそうですか」などと聞いたアンケート調査です。

実際に企業の生産が活発かどうかは経済産業省が発表する鉱工業生産指数をみると分かります。

一般の人の気分を知るには内閣府の「景気ウオッチャー調査」がお薦めです。

これは、タクシーの運転手さんや百貨店・コンビニの売り場担当者に、

景気の実感を聞くという調査です。

貿易など国境を越えた取引の動きについては、貿易統計や国際収支のデータ(財務省、日銀)を

参考にするといいでしょう。

物価の動きは企業物価指数(日銀)や消費者物価指数(総務省)をみれば分かります。

これらの値は米国のものと比較して見ることが大切です。

日経新聞・電子版にも経済指標をまとめたページがあるので、ここからデータを

手に入れることもできます。

円相場のグラフと比べれば、どの経済指標が為替と関係が深いのかが分かるはずです。

また経済指標を計算・発表している官庁や経済団体のホームページも便利です。


【予想の仕方に「正解」はない】


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外国為替の予想は奥深い世界で、
プロの間でもいまだに完成された方法はありません。



みんな工夫を重ねながら、様々な方法を試しているのです。

みなさんも、ぜひ独自の予想方法を編み出してください。

また、どんなニュースや指標に注目すればいいのか、それらがどう動くのか、

知恵を絞って考えてみてください。

中高生は、社会科だけでなく数学などで習った知識が活用できるかもしれません。

大学生は経済学のほか、工学なども役に立つかもしれません。

たとえ予想が的中しなくても、為替の動きを通して世界の動きが見えてくるはずです。

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答えが無いFXの世界で戦っていくことはとても大変です。

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それでもこの世界には大きな魅力があります。

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